ヴァンダの部屋
ポルトガルの気鋭の映画監督と言われている
ペドロ・コスタがリスボンの移民街に2年間滞在し、
120時間撮影したフィルムを3時間に凝縮したドキュメンタリー。
ヴァンダというクスリ漬けの女性をそのフィルムの中心として、
出口の見えない退廃した移民街の時間を撮る。
物語にほとんど展開はなく、
断片的なシーンが続く。
ヴァンダがヘロインでゴホゴホと咳をする。
行商が家々を訪れてキャベツを売る。
住む人のいなくなった家が取り壊されてゆく。
ゴホゴホと咳をする。痰を吐く。
注射針を洗う。
絡まった糸を姉妹でほどいている。
肉をさばいている。
ゴホゴホと咳をする。
ショベルカーが廃墟を解体してゆく。
それぞれが物語として意味を示すのではなく、
ただただ街に起きる出来事を映し出す。
しかし、そこに流れる時間は
圧倒的に僕たちにその状況を見せつける。
田中功起にも似ているような。
ほぼすべてのシーンが
フィックスというカメラを固定した状態で撮られており、
瓦礫同然のコンクリートの街並みを
光と影のグラデーションとともに映し出す。
その情景がとても美しい。
退廃的な風景に魅入られてしまう。