浮世でランチ
「人のセックスを笑うな」で文藝賞を受賞し、
華々しいデビューを果たした女性作家の2作目。
発表されるほかの小説でも大抵、
芥川賞や野間文芸新人賞の候補として挙げられている。
中学生時代の「私」と、25歳になった「私」の
エピソードが交互に綴られていく。
中学時代では、
人気者だけどオネエ言葉の幼なじみや友達と、
自分たちで規則を決めてお祈りを捧げる「宗教ごっこ」という
遊びを中心にしたやりとりが描かれ、
25歳で働く職場では、
なんとなく同僚のひとたちと距離をおきつつ
ひとり公園でランチを過ごしたり、
退職してアジアを旅する記録が続く。
アジアの旅では、
人の生と死がごちゃ混ぜに見えてくる情景が描かれる。
中学時代と25歳のおよそ10年間の隔たりを
かすかにつなぐのは人の生死と宗教の話。
ただ、タイトルの語感からもイメージできるとおり、
力んだような感じではなく、
なんとなく、でも実感があるように
つらつらと書かれていく。
それにつられるように、
なんとなく一日で読み終えてしまった。
このふわふわしている感じが、
宗教(大きくいえば何か信じること)、
というものに対して
教条的ではないありかたを示しているように思う。
日常の捉え方や人物の掘り下げ方に
女性らしさを感じつつも、
雰囲気だけじゃなく物事に向き合って
気持ちをのせていくバランスが良い。
なんとなく、という言葉を何回も
使ってしまってるけど、
ホントにそんな感じで、でも記憶に残った小説。