浮世でランチ

kta6662012-02-21

人のセックスを笑うな」で文藝賞を受賞し、
華々しいデビューを果たした女性作家の2作目。
発表されるほかの小説でも大抵、
芥川賞野間文芸新人賞の候補として挙げられている。


中学生時代の「私」と、25歳になった「私」の
エピソードが交互に綴られていく。


中学時代では、
人気者だけどオネエ言葉の幼なじみや友達と、
自分たちで規則を決めてお祈りを捧げる「宗教ごっこ」という
遊びを中心にしたやりとりが描かれ、
25歳で働く職場では、
なんとなく同僚のひとたちと距離をおきつつ
ひとり公園でランチを過ごしたり、
退職してアジアを旅する記録が続く。
アジアの旅では、
人の生と死がごちゃ混ぜに見えてくる情景が描かれる。


中学時代と25歳のおよそ10年間の隔たりを
かすかにつなぐのは人の生死と宗教の話。
ただ、タイトルの語感からもイメージできるとおり、
力んだような感じではなく、
なんとなく、でも実感があるように
つらつらと書かれていく。
それにつられるように、
なんとなく一日で読み終えてしまった。


このふわふわしている感じが、
宗教(大きくいえば何か信じること)、
というものに対して
教条的ではないありかたを示しているように思う。


日常の捉え方や人物の掘り下げ方に
女性らしさを感じつつも、
雰囲気だけじゃなく物事に向き合って
気持ちをのせていくバランスが良い。

なんとなく、という言葉を何回も
使ってしまってるけど、
ホントにそんな感じで、でも記憶に残った小説。