長谷川豪展 スタディとリアル

kta6662012-02-13

 (金曜日のみ11:00~19:00 日曜日、月曜日、祝日など休館)

  • 入場料 無料

日本の30代建築家を牽引する一人である長谷川豪の展覧会。
建築家にとって、模型制作は基本的なスタディ(検討)のひとつ。
長谷川氏はそのスタディを、
今の時代に必要である能動的な姿勢ととらえ、
実際に建ったものの現象=リアルとの応答を再考した。


それぞれのフロアには、大きな直方体の上に
プロジェクトの模型や図面が展示され、
中庭には、東日本大震災で甚大な被害を被った
石巻市の幼稚園に移築する予定の鐘楼が建てられた。
展示中は、鐘楼は1日に3回鳴らされる。


各フロアの展示台となる巨大な直方体はそれぞれ、
「桜台の住宅」の中心的な存在であるテーブルと同じ大きさ、
「狛江の住宅」の庭と同じ大きさとしている。
展示されている模型は1/100などもあるけれど、
「経堂の町屋」の1/1スケールの断面詳細図も印刷されていたりと
極小と実物のスケール感が往復する感じもまた、
スタディとリアルの往復、ということだろうか。


誰の言葉だったか、
「考えることは抽象化することである」という言葉を思い出した。


建築という行為は、基本的に置き換えがきかない。
それぞれの建築物とそこから起こる現象(リアル)は、
その時代でのみ、その場所でのみ存在する。
どれだけ模型をつくろうと、実物大のサンプルを集めようと、
実際に建った建物の現象を頭の中で捉えることはできない。


建て売りというのは、
そのもどかしさに対する一種の担保ではあるが、
それはまさに、例えば都市近郊の様々な場所を「郊外」と
十把一絡げに呼んでしまうような、
リアルすら抽象化して感知してしまう危険を孕んでいる。


狛江の住宅では500以上の模型をつくったという長谷川氏は、
その様々なスタディを通して、
場所や時代や条件の抽象化を繰り返すことで、
建築することから生まれる現象を
再び複雑で豊かなものにしようとしてるのかなと思えた。


あまりうまく言えないけれど、
「カワイイ」に代表されるような、価値観の押しつけ
(これもまた建て売りと同じ危険性を持っている)がなく、
かといって凡庸でもない、
緊張感のあるデザインであるように感じられる。
作品集がもうすぐ出るらしいので
お金ないけど買ってみよう。


しかし、最近は写真OKの展覧会も多いのに
写真の1枚もないブログ書いてちゃダメだな。
この展覧会も写真OKです。