パンク侍、斬られて候

kta6662008-08-01

パンク歌手や俳優を経て文学界に殴り込み、
いざ筆をもつと、野間文芸新人賞芥川賞など数々の賞を受賞。
異彩を放つ町田康の代表作のひとつ。
時代小説なのにところどころ現代語が混じる。


町田の作品を読んでいると、
いつもそこに生真面目さを感じる。
その生真面目さがシュールな笑いとリアリティを生んで、
さらに一行先が予想できない展開と切れ味のある文体が加わって
読み始めるととまらないくらい面白い。


生き生きとした描写の巧さは言うまでもない。
気になるのは、ぱらぱらとテンポよく展開される物語の全容だ。


この作品では幾人かの登場人物にスポットがあてられ、
複数の人間を含んだ「状況」に重心がある。
状況が重ねられて物語になってゆく。


その重ね方に予定調和的な退屈さはない。
でも読み終えた後は物語になっている。
構成から物語をつくらない。


でもなにより、
こんな風にいろいろと考えを巡らせることすら
バカらしく思わせることがすごいと思いました。