ひかりのまち
短編漫画を主に描く漫画家の作品で、
ほかに「素晴らしい世界」「ソラニン」が知られている。
「ソラニン」は映画化される予定。
この作品の他に「虹ヶ丘ホログラフ」「素晴らしい世界」を読んだんですが
これが個人的には一番良いかなと思ったのでこれを紹介します。
陽当たりのよい新興住宅地、通称「ひかりのまち」を舞台として
短編の連作が収録されている。
どうにもならない理想と現実との狭間の中で
自殺幇助をする少年や悩みを抱え込む女子高生、大金を得ることに執着するチンピラの
思いが錯綜してゆく。
登場人物のそれぞれの思いとか考えは、
自分の周りの環境だとか出来事に対するリアクションの積み重ねでできたもので、
「素晴らしい世界」でも感じられたことだけど、
目新しくはなく、青臭いと言えば青臭い。
でも、この作者がいいなあと思えるのは
その微視的な視点をもつ思いを表現する登場人物の言動が
今の社会でありそうなことで、
ジリジリと照り返すコンクリートと
じめじめとしたアスファルトに挟まれた
ぼくたちの希薄な存在感と
それへの反抗がこの作品に感じられることだ。
悩みとか夢とか希望とか絶望とか
そういう叫びたくなるような衝動と、
毎日まるで変わらないような顔をする世の中と、
どうやって折り合いをつけて、整理をつけて生きてゆくのか。
それが問題だ。
あと、ここに出てくる新興住宅地の有様をみて、
建築を考える身としてはやっぱり何か考えさせられるものがあります。
三丁目に沈む夕日とは違う、これからの原風景って何なのか。
それも問題だ。