リリイ・シュシュのすべて
岩井俊二の代表作。「遺作を選べたら、これにしたい」と岩井は述べている。
岩井はまず、この作品を実験的とも言えるインターネット小説として書いている。
これを映画にしたものが本作品である。
地方の田園風景の広がる町を舞台に、
中学生が織りなす暴力やいじめ、援助交際、強姦などの
社会的な事件を辛辣に描き出す。
その中でキーとなる歌手「リリィ・シュシュ」。
彼女の歌声に主人公やその他の登場人物は自己の支えとなる世界感を見つける。
要所要所にそのリリィ・シュシュのファンサイトの書き込みが出てくる。
これが重要な意味を持つことになる。
ところどころにハンディカメラで
撮影したフィルムを使用している。
これは、その場の人の視点から(ぶれも含めて)見せることで、
登場人物の見るものや聞こえるものを追体験させようと
狙ったものであるといえる。(ブレアウィッチプロジェクトの効果と同様)
編集に無駄なシーンが多いように感じるのも
事件をただ単に事実として伝えようとするのではなくて
その前後の人間関係や事件の特異性・突発性を含めて
浮き彫りにしようとしているからだといえる。
それぞれの中学生の性格や会話、仕草が嘘くさくなくて
入り込みやすい映画。
誇張する表現もあまりなくて
ドラマチックではない分生々しさが伝わってくる。
地方都市の中学校という閉じた共同体。
いじめ、上下関係という抜けがたい悪循環。
音楽に支えられる孤独な世界。
インターネットによる匿名同士のつながり。
一度見たあとに反芻して考えてみると
なかなか考えられた構成にもなっていて、
もう一度見返したくなりました。
この作品については賛否両論あったようだけれど
個人的には印象に残る、考えさせられる作品で、
良い映画でした。