パレード

kta6662008-03-08

第15回山本周五郎賞受賞作。
明確な関係性がない若者5人の共同生活を描いたもので、
それぞれの人物の視点から1章ごとに話が進む。
5人はそれぞれに個人の思惑があるが、
それが共同生活を行うマンションの中では露わにならない。
あらゆる方向から照射された個人の全体像があらわれることはなく、
テレビに映る役者のように、ある一部分しか推測できない。
しかし、それでうまく共同生活が成り立ってしまう。
もしくは、成り立たせている。
この現代的な人間関係が生み出すものとは何か。


全体的な流れはコミカルで、そこに読みやすさがあるのだけれど
ところどころに不協和音が混じる。
それが、通奏低音というかなにか重要な一部分であるような気になって、
この物語の全体像をぼんやりとした、一言では言い表せないものにする。
それがいい。


タイトルに込められた皮肉と哀愁を
読んだ後、実感しました。
実感したのは、人物や場面の描写がいちいちうまいからか。
吉田修一はやっぱりすごい。